カーボンニュートラルの実現を目指して、2023年1月1日から既存船エネルギー効率指標(EEXI)と年間燃費格付け制度(CII)の導入適用が始まります。
この規制により商業船舶の運航において新たな課題が生じることとなり、船主たちは規制要件に応じて保有する船舶の評価と改善を行う必要があります。
国際的な航海や貿易活動をこれまでのように行うためには、証明書を取得といった条件も存在するため、流体力学の観点から最適化に取り組むことは非常に重要となることが考えられます。
この新しい義務的措置は、国際海運のCO2排出量を削減するために国際海事機関(IMO)によって導入され、2018年にIMOの初期戦略で定められた温室効果ガス削減目標に向けたものとなります。
EEXIは、船舶の設計パラメータのみに基づいて船舶のエネルギー効率を決定する技術指標です。
初回認証時に1度だけ計算する必要があり、造船時のエネルギー効率設計指数(EEDI)と同じ方法論に基づいています。
EEXIは、輸送作業あたりのCO2排出量(トンマイルあたりのCO2グラム)を簡略化して推定します。
排出量は、メインエンジンの出力・燃料油の消費量・燃料とCO2量との換算係数から計算されます。
これにより可能な削減要因の追求と省エネ機器の導入を考えることとなります。
CIIは定期的な運航要件であり、ある暦年に排出されたCO2の総量(実際に消費された燃料)と、総輸送作業量(移動距離と船の容量)の比率で計算されます。
船舶の年間CO2排出量の性能は、A・B・C・D・Eに分類するIMOの格付けシステムをもとに比較されます。
3年連続でD評価、またはE評価を受けた船舶は、性能改善する方法を示す是正措置計画の提出が義務付けられることになります。
EEXIとCIIの認証プロセス
排出量を中程度あるいは大幅に削減し、燃費を改善しなければならない船舶には、技術的・運用的な改善のためのオプションがいくつか用意されています。
オプションとしては、低炭素燃料への転換・エンジン出力の制限・速度の低下・エネルギー効率の高い船舶への改造などが含まれます。
EEXIとCII規制を達成するためにできる是正措置としては、さまざまな改造によって船の流体力学的性能を向上させることに関連しています。
これらの対策は、必要な出力を減らして燃料消費量を減らすか、与えられた出力で船速を上げるかのどちらかであり、どちらの場合も同様に指標の改善につながるという共通点があります。
時には、他の改造との組み合わせによりさらなる効果を成すこともあります。
例えば、速度を大幅に落として運航する船舶で、性能の良くないバルバスバウを使用している場合などです。
ここでの典型的な改造例としては、バルバスバウの交換・プロペラの改造・空気循環システム・風力補助推進システム・後流ダクト・プレスワールステーター・プロペラボスキャップフィンなどの省エネ装置などがあります。
CAESESによるバルバスバウの設計
このような船舶の改造には多額の投資が必要となるため、改造によって得られる効果を最大化することが重要となります。
また、CII規制のクリア状態をできるだけ長く持続させることも大切であり、これはCFDシミュレーションに基づく流体力学的最適化だけで合理的に達成できるものです。
CAESESは、効率的な自動プロセスで多くの設計バリエーションを解析することにより、設計空間の徹底的な調査を可能にします。
独自のパラメトリックモデリングとバリエーション機能、使いやすい最適化環境、外部ツールとの接続のためのインターフェースを兼ね備えたCAESESは、真の最適設計の実現・開発期間の短縮・設計性能に関係するすべてのパラメータの影響の理解が可能となる、最適化ツールセットとなるでしょう。
CAESESで生成された様々な船体バリエーション