自動車産業の発展と自動車の高速化に伴い、自動車の空気力学にますます注目が集まっています。優れた空気力学的設計は、高効率と省エネの目的を達成するだけでなく、騒音を低減し、車両の乗り心地や走行性能、安定性、より強固なセキュリティ保証を提供します。近年において、それは航空宇宙分野のみではなく、現代のあらゆる工業デザインにおいて不可欠な要素の1つです。
自動車の空力研究には大きく分けて、風洞実験を行う方法と数値流体力学技術を用いて数値シミュレーションを行う方法のふたつとなります。風洞実験と比較して、シミュレーションには、再現性、短いサイクル、低コスト、および包括的で豊富な流れ場解析機能という利点があり、コンピュータ性能が絶えず向上するにつれて、CFD解析ソフトウェアは徐々にエンジニアにとって一般的なツールとなっています。また、数値シミュレーションを通じて、製品開発の初期段階で設計スキームを確立することも可能です。
このように、CFDの1つの側面として、外部流れ場の空力解析は、車両の設計において重要な役割を果たしています。本事例では、乗用車モデルを使用した自動車の空気力学を解析し、基本となる圧力分布や流れのベクトルを評価しました。
■使用ソフトウェア:AICFD
使用する形状データは、モデリング比率1:1の中心対称モデルとなります。クリーンアップを行うことで、ライト、ドアハンドル、ミラーなどを省略し、細かくて複雑な底面を修正しました。走行状態を再現するため、車体前後部・上部・側面から車体までの距離は流れに影響がない大きさで設定されています。
図1:AICFDの操作画面と解析形状
メッシュモデルは、四面体を基本とする非構造メッシュであり、壁近傍には5層レイヤーメッシュが追加されています。セル数は244万です。
図2:全体メッシュ分布
図3:車体近傍のメッシュ分布
境界条件として、入口には40[m/s]の流速条件、出口には静圧0[Pa]の圧力条件、壁面条件はすべりなしとして設定します。
解析結果の断面圧力分布図より、車の前部の圧力は比較的高く、後部には負圧があり、前後の圧力差が車の圧力差抵抗を引き起こしていることが分かります。
図4:車体近傍の断面圧力分布
図5:車体表面の圧力分布
下記の図は車体近傍の流線図です。車両の操縦安定性に影響を与える要因の1つである、空気の剥離による車両後方の後流渦を確認することができます。
図6:車体近傍の流線
さらに、自動車後部の速度流れ場のベクトルも評価しました。大規模な渦の形成と消散により、気流のエネルギー消費が増加し、それによって空力抵抗が大幅に増加します。
図7:車体後部から20cm位置(左)、車体後部から40cm位置(右)
図8:車体後部から60cm位置(左)、車体後部から80cm位置(右)