自動車産業の発展と自動車の高速化に伴い、自動車の空気力学にますます注目が集まっています。
優れた空気力学的設計は、高効率と省エネの目的を達成するだけでなく、騒音を低減し、車両の乗り心地や走行性能、安定性、より強固なセキュリティ保証を提供します。
近年において、それは航空宇宙分野のみではなく、現代のあらゆる工業デザインにおいて不可欠な要素の1つです。
自動車の空力研究には大きく分けて、風洞実験を行う方法と数値流体力学技術を用いて数値シミュレーションを行う方法のふたつとなります。
風洞実験と比較して、CFDシミュレーションには、再現性、短いサイクル、低コスト、および包括的で豊富な流れ場解析機能という利点があり、コンピュータ性能が絶えず向上するにつれて、CFDソフトウェアは徐々にエンジニアにとって一般的なツールとなっています。
また、数値シミュレーションを通じて、製品開発の初期段階で設計スキームを確立することも可能です。
このように、CFDの1つの側面として、外部流れ場の空力シミュレーション計算は、最新の車両の設計において重要な役割を果たしており、このケースでは自社開発ソフトウェアであるAICFDを用いた自動車の空力シミュレーションについて紹介します。
AICFDは、自社開発の熱流体シミュレーションソフトウェアであり、高速かつインテリジェントなシミュレーションを実現します。
基本的な機能は、モデルのインポート、メッシュモデル作成、シミュレーション、結果の後処理、インテリジェントアクセラレーションの5つとなり、形状モデルからシミュレーション結果までの完全な解析プロセスをカバーしています。
AICFDは、数値シミュレーションと独自の加速アルゴリズムを通じて、使いやすく効率的な熱流体シミュレーションをユーザーに提供します。
このソフトウェアは、工業設計で一般的に使用される流体シミュレーション機能を提供しており、流れの種類には、単相非圧縮性流れ、単相圧縮性流れ(亜音速、遷音速、超音速流れ)、熱伝達、多相流をサポートし、ターボ機械や熱交換器の流れといった複雑なケースにも適用可能となります。
AICFDは、一般的な物理モデルのみならず、ロバストな数値形式と境界条件を提供し、エネルギーと電力、海洋、航空宇宙、自動車の分野のエンジニアの業務をサポートします。
シミュレーションに使用する形状データは、モデリング比率1:1の、中心対称モデルとなります。
クリーンアップを行うことで、ライト、ドアハンドル、ミラーなどを省略し、細かくて複雑な底面を修正しました。
走行状態を再現するため、車体前後部・上部・側面から車体までの距離は流れに影響がない大きさで設定されています。
図1: 形状データ
メッシュモデルは、四面体を基本とする非構造メッシュであり、壁近傍には5層レイヤーメッシュが追加されています。
このモデルのセル数は244万[cell]となりました。
図2: 全体メッシュ分布
図3: 車両近傍のメッシュ分布
入口流速条件: 40[m/s] (-Z方向)
出口圧力境界: 静圧一定 (相対圧力=0[Pa])
壁境界: No Slip
対称境界: Symmetry
AICFDは、メッシュモデルの作成からポスト処理までを同一GUIで実施することが可能となります。
下図の圧力コンター図より、車の前部の圧力は比較的高く、後部には負圧があり、前後の圧力差が車の圧力差抵抗を引き起こしていることが分かります。
図4: 車体近傍の圧力分布
図5: 車体表面の圧力分布
下図は車体近傍の流線図です。
車両の操縦安定性に影響を与える要因の1つである、空気の剥離による車両後方の後流渦を確認することができます。
図6: 車体近傍の流線
下図は自動車後部の速度流れ場のベクトル図です。
大規模な渦の形成と消散により、気流のエネルギー消費が増加し、それによって空力抵抗が大幅に増加します。
(左)車体後部から20cm、(右)車体後部から40cm
(左)車体後部から60cm、(右)車体後部から80cm
図7: 車両後部の速度流れ場のベクトル図
今回の結果をベースとして、他商用ソフトウェアとの比較を行いました。
同一メッシュモデル、乱流モデル(標準K-Epsilonモデル)、および境界条件が計算に使用され、すべて収束基準に達しました結果となります。
図8: 車体表面圧力の比較
図9: 車体表面摩擦力の比較
図10: 車体断面の圧力分布の比較