この記事では、TCAE®を用いた風力タービンのCFDシミュレーションについて紹介します。
風力タービンは、風によって発生する運動エネルギーをプロペラの回転エネルギーに変換することで発電する、大型の装置のことです。
再生可能なエネルギーとして注目されており、国内のみならず世界中で普及しています。
今回はTCAEの流体解析モジュールであるTCFDを用いた風力タービンの解析フローについて解説していきます。
風力タービンは、垂直軸型と水平軸型のふたつのタイプがあり、設置場所に合わせた選定により幅広く活用されています。
タービンそのものでいうと、小型タービンは、ボートやキャラバンなどの補助電源のバッテリー充電や、交通標識の電源などに使用されており、少し大きめのタービンは家庭用電源として活用されており、使わなかった電力は送電網を通じて電力会社に売るという方法も浸透してきています。
そのような中、風力発電所と呼ばれる大型タービンのアレイ(発電機器を複数設定したもの)は、断続的な再生可能エネルギーの供給源として重要性が増しており、多くの国で化石燃料への依存を減らす戦略の一環として利用されています。
2009年の時点で風力発電は、太陽光、水力、地熱、石炭、ガスと比較して温室効果ガスの相対排出量/水の消費量が最も少ない、社会的影響が最も好ましい発電方法であると評価されています。
引用:https://en.wikipedia.org/wiki/Wind_turbine
今回のケースで使用する風力タービンのCADモデルはstep形式のデータを使用しました。
一般的なCFDシミュレーションを行う場合、stepファイルの構成は非常に複雑であるため、形状のクリーンアップといったプリ処理が必要となります。
ここでは、オープンソースソフトウェアのSalomeを活用した単純化とクリーンアップを行い、 小さなパーツや解析に問題を発生させる複雑なパーツが取り除かれることとなりました。
モデルは最終的に水密性のあるサーフェスモデルとなっており、プロペラの回転領域を表す円柱が追加されました。
また、流体が流れるための外部領域の作成が必要となるため、Bounding Boxという境界条件の設定が可能な仮想空間を作成する機能を活用し、CADソフトウェア上で外部領域を作成する作業を省略します。
モデルの処理が完了したら、それぞれのサーフェス(パッチ)に識別情報を定義して、stl形式にて出力します。
プリ処理を行ったモデル
stl形式のモデルデータをTCAEのメッシュ作成モジュールであるTMESHに読み込みます。
TMESHでは、stl形式以外にもOpenFOAM形式、MSH形式(Fluent)といったメッシュデータを読み込むことが可能となっています。
TCAEでは、モデルを領域ごとに分割するマルチコンポーネント方式を採用しており、それぞれの領域に対して独自のメッシュ設定を行い、領域の接続にはインターフェースを使用します
風力タービンモデル
TCAEでは、メッシュ設定から解析実行、ポスト処理までのすべてを同一GUIで行うことができます。
GUIは、ParaViewをベースにした視覚的な構成となっており、コマンドラインのような操作ではなく直感的な設定が可能となっています。
GUI
今回のモデルの解析領域については、プロペラ回転領域と外部領域の2つで構成されています。
領域ごとに設定されたメッシュ設定のもと、全てのメッシュはsnappyHexMeshによりメッシュモデルが作成されます。
メッシュモデル
TCAEで作成された解析モデルの領域接続は、コンポーネントグラフというモデルトポロジーの表示機能があります。
この機能により、入口出口はどこに設定されるのか、領域ごとの接続は適切に行われているのかを一目で確認することができ、設定ミスを未然に防ぐことができます。
コンポーネントグラフ
・非圧縮性モデル
・定常計算
・作動流体:空気
・粘性率:μ=1.831e-5[Pa.s]
・流速:10[m/s]
・インターフェース条件:freestream - solid body motion(no average)
・乱流モデル:k-ω SST
・セル数:14,724,069[cells]
・メッシュ平均y+:126
・CPU時間(定常計算):78[core.hours]
シミュレーションには、マシンのリソースに応じた任意のプロセッサ数を使用して実行します。シミュレーションが開始された直後から、ユーザーはすべての評価対象の値や収束判定に使用する重要なデータを進行状況と共にモニタリングすることができます。
残差
Axial Force
トルク
効率
今回は、TCAE®による風力タービンの解析ワークフローについて紹介しました。
ワークフローからもわかるように、同一GUI上での作業・ライセンス無制限をフルに活用することで、効率面とコスト面に大きなメリットがあるでしょう。
このターボ機械を対象としたCFDシミュレーションツールは、オープンソースの利点と商用ソフトウェアの利点を両方兼ね備えたことで、設計開発業務への効率的なサポートを実現します。