車体周り流れのAI加速解析

はじめに


車両周りの流れをシミュレーションして空力特性を解析することは、自動車の形状や設計が空気の流れに与える影響を評価する重要な事項であり、燃費向上、走行安定性、ドライバーの安全性に直結するあらゆる情報を定性的、定量的に得ることができます。通常、簡易的な形状から詳細なモデルまでのさまざまな規模のモデルを使用するこの解析では、計算時間とマシンリースのコストを考慮しながら、デザインから製造、走行性能まで広範囲にわたる影響を調査するための情報を解析により導き出します。


本解析では、AICFDに搭載されたAI加速機能を用いて、車体周りの流れをシミュレーションしました。また、同一モデルを用いて通常解析およびシリアルコアとの計算時間、精度の比較を行うことで、AI加速機能の有効性を検証します。


解析概要


本解析では、320万セルのメッシュモデルを使用し、通常解析のシリアルコア、並列4コア、AI加速解析のシリアル、並列4コアをそれぞれイタレーション数4000回で計算します。各結果をもとに、流れ場の定性的評価と、計算時間、抗力、最大速度、最大圧力の定量的評価を行います。


解析結果


可視化した各結果の速度分布を以下に示します。AI加速機能を使用した場合でも、通常解析と同等の流れ場を取得することでき、速度変化が発生する領域も適切に捉えることができます。


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図1:速度分布図の比較


本解析では、計算の高速化を目的とした検証を行っており、各項目の比較結果を以下に示します。計算時間に関しては、AI加速を用いたシリアル計算で通常のシリアル手法と比較したところ、23.6%の時間短縮を確認しました。さらに、並列計算においてもAI加速機能を適用することで、従来の並列手法に対して18.2%の計算時間短縮を実現しています。


これらの結果は、AI加速機能が従来解析に比べて計算効率を向上させる有力な手段であることを示しています。特に、実機での風洞試験の前段階で多くの設計案を短時間で評価したい場面において、その効果は顕著です。


加えて、精度面においてもAI加速機能による計算では、従来解析と比較して解析結果に有意な差が見られず、誤差がほとんど存在しないことが確認しました。つまり、計算時間の短縮が精度の低下を招くことはなく、信頼性の高い解析結果が維持されたことを読み取ることができます。このように、AI加速技術は高精度を保ちつつ、設計現場で求められるスピード感に対応するための実用的な手段として有効です。特に設計初期の段階で複数案を高速に評価し、迅速な意思決定を行いたい場合において、その価値は非常に高いといえます。


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