電気自動車用モータの熱設計最適化

はじめに


電気自動車において、モーターは車両の駆動を担う重要な動力部品であり、その性能と耐久性を維持するためには適切な熱管理が不可欠です。特に、冷却システムはモーター内部の熱を効率的に放散し、安定した動作を確保する上で重要な役割を果たします。


モーターの熱設計最適化では、冷却性能を最大化するために、さまざまな設計パターンを通じて最適な冷却効果を研究する必要があります。最適化プロセスでは、流路の数や直径、端部巻線の傾斜角や配置といった設計パラメータが重要な要素となります。さらに、冷却効率を高めるためには、流量制御や端部巻線の温度管理にも細心の注意を払う必要があります。


本事例では、フレキシブルなパラメトリックモデルに基づく最高温度の最小化を目的とした最適化を実施しました。ステータとロータで構成されたモーターを、さまざまな形状変化が可能となる設計変数を定義しており、最適な流路パターンを導き出します。


■使用ソフトウェア:CAESES、CFD解析ツール


最適化概要


モーターの冷却システムを最適化するため、まず冷却流路を含めたフルパラメトリックモデルをCAESESで作成し、流路の数や直径などの設計変数を柔軟に調整できるモデルを構築します。このアプローチにより、多様な設計案を効率的に比較・評価し、冷却性能の向上につながる最適形状の探索が可能となります。最適化計算は、CAESESとCFD解析ツールを組み合わせたシミュレーションプロセスを確立することで、流動挙動や熱交換特性を高精度に解析し、最適な冷却条件を探索します。


coolpipe_639x670.giffullmodel_770x677_02.GIFstator_rotor.gif

図1~3:定義された設計変数


最適化結果


最適化計算により、モーターの冷却性能が向上し、最高温度を96.4℃から92.9℃へと3.5℃低下させることに成功しました。この温度低減により、モーター内部の熱負荷が軽減され、長期間の安定した動作に繋がります。


また、冷却媒体の流れを最適化したことで、分布がより均一になり、端部巻線の温度ばらつきも抑えられました。これにより、特定部位の過熱による劣化リスクが低減され、モーター全体の耐久性向上が期待されます。加えて、最適化された冷却設計により、エネルギー効率の向上やシステム全体の信頼性向上にも寄与することが考えられます。


QQ スクリーンショット 20181218145857.png

図4:初期形状と最適形状の温度分布比較