この記事では、TCAE®を用いたラジアルタービンのCFDシミュレーションについて紹介します。
ラジアルタービンは、回転軸に対して直角方向(ラジアル方向)から流体が入ってくことで、羽根車を回転させるという、タービン形式のひとつとなります。同出力の軸流タービンと比較して小型で高い効率を得ることができるのが特徴になります。構造も比較的単純であるため、発電関係の他にも無人航空機や自動車にも用いられています。
今回はTCAEの流体解析モジュールであるTCFDを用いたラジアルタービンの解析工程について解説していきます。
今回の解析に使用するタービンの形状はCFturbo®により設計が行われています。CFturboは、ターボ機械の設計に特化した3Dモデリングツールであり、新規設計や既存製品の再設計を柔軟に行うことができます。
CFturboにより作成されたラジアルタービンモデル
設計された形状データはCFturboからSTL形式のモデルデータとして出力されます。TCAEでのメッシュ作成はSTL形式のデータに対応しており、ラジアルタービンモデルはメッシュ作成モジュールTMESHに読み込まれます。
CFturboのGUI
ラジアルタービンモデルは4つのコンポーネント(領域)に分割されており、インレットチューブ・インペラ・ガイドベーン・ボリュートの構成となっています。TCAEでは各コンポーネントに対してメッシュ設定を行うことでより解析に適したモデルを作成することができます。メッシャーにはsnappyHexMeshが採用されており、設定後のメッシュ作成は自動で行われます。
TCAEに読み込まれたラジアルタービンモデル
効率的な解析を行うにあたり一般的なアプローチは、周期性のある形状を分割した周期モデルによる解析になります。ポスト処理の段階で全体モデルとして表示させることで、最終的な評価を行うことも可能となります。
インペラ形状を持つ場合には、ブレードのワンピッチモデルをCADソフトウェア上で作成し、TCAEに読み込ませることで周期形状に対する設定を行うことができます。周期形状にすることで、メッシュ数の削減/解析時間の短縮に繋がるため、効率的に解析業務を進めることが可能です。また、TCAEはライセンス無制限であるため、解析リソースの限りで同時に複数の解析を行うこともできます。
周期形状に対して全体モデルによるアプローチは、解析にかかる時間は大きくはなりますが、結果がロバストとなりやすいと考えられています。
解析に使用したメッシュモデル
TCFDで境界条件設定やインターフェース設定をした各領域が、正しく接続設定されていることを確認する場合には、コンポーネントグラフが有効となります。コンポーネントグラフは、各領域がどのように接続されているかというモデルトポロジを簡単に確認することができます。Inlet、Outlet、Interfaceといった設定がどのように状態であるかを一目で確認することができます。
コンポーネントグラフ
圧縮性考慮:あり
時間設定:定常
作動流体:空気
BEP圧力比(最高効率点での圧力比):ΔpTot=1.9[-]
入口温度:T=1000[ºC]
粘度:μ=1.831e-5[Pa.s]
回転速度:150000[RPM]
BEP質量流量(最高効率点での質量流量):0.045[kg/s]
インターフェース設定:mixingInterface
乱流モデル:k-ωSST
メッシュセル数:512436[-]
メッシュ平均y+:55[-]
CPU時間(1条件):3.8 [core.hours]
TCAEのGUI
シミュレーションには、マシンのリソースに応じた任意のプロセッサ数を使用して実行します。シミュレーションが開始された直後から、ユーザーはすべての評価対象の値や収束判定に使用する重要なデータを進行状況と共にモニタリングすることができます。
今回の解析設定では収束のタイミングを把握しているため、境界条件に設定したMass Flow Ratesの条件を9つ設定し、連続で解析を行う設定としています。最初にスタートした境界条件値で指定したイタレーション数を計算した後は、計算が完了した前回計算結果を初期値として自動的に解析を継続します。
解析結果から、Mass Flow RateとEfficiency(効率)の関係を示す結果が自動作成されます。また、各条件と解析結果を集計したレポートの自動作成が可能となっています。
解析結果は、GUIに組み込まれているParaViewによってポスト処理を行うことができます。ParaViewは、CFDデータを分析するためのすべての標準機能が備わっているポスト処理ツールであり、ユーザーの希望する処理を簡単に行うことができます。
コンター図表示のサンプル
TCAEでは、ターボ機械のポスト処理用にTurboBladePostという拡張機能が追加されています。TurboBladePostでは、ブレード間の可視化や子午面平均でのコンター図の出力が可能となっています。
Turbo Blade Post内では、Blade to Blade viewは、ブレード指定高さ位置で変数表示を行い、ブレード表面や周囲の状態を確認することができます。
Blade to Blade view
もう1つの機能は周方向平均の子午面表示です。この機能は、Meridional average viewと呼ばれており、ブレードを通過した作動流体の圧力や速度分布がどのようになっているかを2次元的に確認することができます。
Meridional average view
今回は、TCAE®によるラジアルタービンの解析ワークフローについて紹介しました。
ワークフローからもわかるように、同一GUI上での作業・ライセンス無制限をフルに活用することで、効率面とコスト面に大きなメリットがあるでしょう。
このターボ機械を対象としたCFDシミュレーションツールは、オープンソースの利点と商用ソフトウェアの利点を両方兼ね備えたことで、設計開発業務への効率的なサポートを実現します。